2008年2月21日木曜日

猿蓑『灰汁桶』もどき

 猿蓑 歌仙「灰汁桶の」の巻     もどき「カラオケの」の巻

                            2008.1.22〜2.20 
                
灰汁桶の雫やみけりきりぎりす 凡兆 カラオケのマイクやみけりきりぎりす狸
 あぶらかすりて宵寝する秋  芭蕉  秋の夜長をごろり手枕      智
新疊敷ならしたる月かげに   野水 月明かり古女房は留守にして    寅
 ならべて嬉し十のさかづき  去来  へそくり並べ盃上げる      兔
千代経べき物を様々子日して   蕉 千年の古都の若菜野からし和へ   蘭 
 鶯の音にたびら雪降る     兆  うぐひすもなけ合格の報     奴 

乗出して肱に餘る春の駒     來 今年こそ夢の馬券を弥生賞     光
 摩耶が高根に雲のかゝれる   水  モナコの空に雲のかかれる    修
ゆふめしにかますご喰へば風薫  兆 風薫るモンテカルロの夜は更けて  不 
 蛭の口處をかきて氣味よき   蕉  カフェーで氷かきて気味よき   狸 
ものおもひけふは忘れて休む日に 水 やり直しハンドボールは連敗で   智
 迎せはしき殿よりのふみ    來  せめて今宵は君に文書く     寅 
金鍔と人によばるゝ身のやすさ  蕉 赤福の若様今日はデートです    兔 
 あつ風呂ずきの宵々の月    兆  三笠の月にいつはりぞなき    蘭 
町内の秋も更行明やしき     來 仲麻呂が算盤使う唐の秋      奴 
 何を見るにも露ばかり也    水  露の世なれば何を語らん     光 
花とちる身は西念が衣着て    蕉 雑念が衣着ている花の宴      修 
 木曽の酢茎に春もくれつゝ   兆  酢茎歯に歯に春や春・春     不 
ナオ
かへるやら山陰傅ふ四十から   水 トラワヨー釜山の海はのたりのたり 狸 
 柴さす家のむねをからげる   來  防風林の補強始める       智
冬空のあれに成たる北颪     兆 毒入りの餃子の怪と寒さ来て    寅 
 旅の馳走に有明しをく     蕉  馳走諦め早寝きめこむ      兔
すさまじき女の智慧もはかなくて 來 借る宿の娘のなさけ露ならず    蘭
 何おもひ草狼のなく      水  憂き世の中を何おもひ草     奴
夕月夜岡の萱ねの御廟守る    蕉 姫路城五重六階夕月夜       光
 人もわすれしあかそぶの水   兆  人もわすれし庶民の涙      修
うそつきに自慢いはせて遊ぶらん 水 ジュセリーノに地震いはせて防ぐらん狸
 又も大事の鮓を取出す     來  保存食にと馴鮨用意       智 
堤より田の青やぎていさぎよき  兆 父置いて娘去り行く青田道     寅 
 加茂のやしろは能き社なり   蕉  ドンドンヒャララ能き社より   兔
ナウ
物うりの尻聲高く名乗すて    來 物見する尻だこ赤き猿のむれ    蘭
 雨のやどりの無常迅速     水  山のやどりに座禅常住      奴 
昼ねぶる青鷺の身のたふとさよ  蕉 嘶ける勝馬の身の尊さよ      光 
 しょろしょろ水に藺のそよぐらん兆  その鬣に風そよぐらん      修 
糸櫻腹いつぱいに咲にけり    來 川の辺の花放課後に咲きにけり   狸 
 春は三月曙のそら       水  入学式の準備完了        智

歌仙『雪ふわり』の巻






      歌仙『雪ふわり』の巻
                  2008.2.7〜20
 
発句   雪ふわり吸い込まれ行く豆礫   草栞  冬
脇      梅はつぼむも春は来ぬらし  春蘭  春
第三   きさらぎの合唱祭も近づいて    亮  春
四      鶯餅にほっと一息      みかん 春
五    月光の中を子猫の影走る     青波  春月
六      どこか病気の人はいないか  こやん

一    災ひを転ずるものはこころにて   蘭
二      ふられ同士が通電し合い    栞  恋
三    道ならぬ恋と知りつつ迷い道    み  恋
四      髪などカット軽い足どり    亮
五    とろ早い波にしばらく一休み    こ
六      トライアスロンゴール目指して 波
七    標石の峠過ぎれば秋涼し      栞  秋
八      底なし沼に月浮かび居る    み  秋月
九    代々の藩主が眠る萩の寺      波  秋
十      着付け手間どりもはや人波   蘭
十一   丹精の由来話しつ花の帯      亮  春花
十二     ひばりの声を空に聞くのみ   こ  春
ナオ
一    放たれた七色風船風と消え     み  春
二      目減りしてゆく貯金通帳    亮
三    日の本の冬の時代はいつまでと   こ  冬
四      ブートキャンプで嘆く間もなし 波
五    うるはしき女教師に険みえて    蘭
六      差し棒かざせば香水仄か    栞  夏
七    携帯もチリチリルルと震えだし   亮
八      あなたのせいとなすりつけあい み
九    代議士の先生秘書をかばわない   波
十      ススキのこうべ垂れるあわれさ こ  秋
十一   夜も更けていつか臥待ち薄明り   栞  秋月
十二     嫁の実家で過ごす盂蘭盆    蘭  秋    
ナウ
一    稼業継ぎ家長面する三男坊     み
二      飾り棚にはグリコのおまけ   亮
三    手びねりの楽で侘び茶のまねをして 蘭
四      裏のとまやの在りし日想う   栞
五    古びたるコンビナートに花は咲き  こ  春花
挙句     春の色した大気きらめく    波  春

                  (捌き 草栞)