2008年6月29日日曜日

出張も旅

旅楽し前も隣も女です      方大

肩ふれて喧嘩はじめる指定席
飛ぶ前に家へ電話のおびんたれ
出張は赤になるのが普通なり

2008年6月27日金曜日

昭和は遠くなりにけらしも

   昭和は遠くなりにけらしも
 言はぬのにコロッケつつみ出す肉屋  

歌仙「きらめきを」


  歌仙「きらめきを」
                      ( 本句取り )
きらめきを青葉に映す水面かな   蘭 あらたうと青葉若葉の日の光  芭蕉
 梅雨の合間のすずろなる風    奴 
地図帳に野ざらしの旅箋付けて   奴 
 ゆるり数へる壺のへそくり    蘭  
歌を詠む妻いそいそと月見会    蘭 芋あらふ女西行ならば歌よまん 芭蕉
 朝顔の飯乱れ髪見ゆ       奴 朝顔に我は飯食う男哉     芭蕉
幕待たず日々稽古する秋進む    狸 日々新たなる舞台とや秋進む  汀女
 おとこ名で書く貴方への文    寅 
これきりの約束で逢う山の宿    寅 子を産まぬ約束で逢う雪しきり 森中
 足湯に遊ふ戯れもせず      狸 
冷酒にまぶしきまでの白浴衣    狸 山冷にまぶしきまでの白浴衣  汀女
 昼寝する児の息は健やか     寅 寝ていても団扇の動く親心  古川柳
貧しさも慣れてしまえば苦にならず 寅 貧しさもあまりの果ては笑ひ合ひ吉川
 樅の木蔭に飲みし山羊乳     狸 
なほ上がるタスポ持たぬぞ夏の月  狸 なほ北に行く汽車とまり夏の月 汀女
 妻に指示され今朝もゴミ出し   寅 
酒がわりなどと番茶で花見して   寅 お茶がわりなどと嬉しい泡が出る大木
 蜃気楼見ゆ波の彼方に      狸   
浅間山おぼろに見ゆる帰省かな   修 ナ 浅間山けぶりの中の若葉かな 蕪村
 煙突高し風呂屋一軒       光
湯冷めして嚔を発し乳房揺れ    光 さうぶ湯やさうぶ寄りくる乳のあたり
 鼻水を啜り井戸水を汲む     修                白雄
此冬はババシャツ着ようとおもひけり修 此冬や紙子着ようとおもひけり 蕪村
 上田の人は今は快調       光
傘さして誰を待つのか田舎駅    光 傘さしてふかれ出し青田かな  白雄
 胸キュンとなる通学列車     修 
なつかしき手紙机の中にあり    修 学びする机のうへの蚊遣かな  蕪村
 竹馬の友は杖が頼りで      光
天心の月に問ひたし今むかし    光 今むかし月はしらずも澄夜かな 白雄
 狐と狸にこの世任せ       修  
廃校舎ぼた絡まりて咲き乱れ    智 哀いかに宮城野のぼた吹凋るらん芭蕉
 陸中の民知らぬ間の土砂     正 陸奥の夷知らぬ石臼      其角
消防士堰止め湖より導水す     智 武士の鎧の丸寝枕貸す     芭蕉 
 号笛鳴りて湯治場に雪      正 八声の駒の雪を告げつつ    其角
避難人花貪りて心債哉       正 詩商人花を貪る酒債哉     其角 
 夢七色にしゃぼん玉舞う     智 春湖日暮て駕興吟       芭蕉

          2008.6.8〜6.27

2008年6月23日月曜日

猿蓑『梅若菜』もどき 


 

 猿蓑「梅若菜」もどき         猿蓑「梅若菜」
                    餞乙州東武行
梅若葉とろろを啜る老二人     修 梅若菜まりこの宿のとろゝ汁  芭蕉
 傘要らぬらし春の曙       狸  かさあたらしき春の曙    乙州
揚げ雲雀棚田三枚借り受けて    智 雲雀なく小田に土持比なれや  珍碩
 太巻たんと下されにけり     奴  しとき祝ふて下されにけり  素男
隣家から団欒漏れて暮の月     寅 片隅に虫歯かゝえて暮の月    州
 茶腹で厠近くなるあき      蘭  二階の客はたゝれたるあき   蕉
メタボなる鶉の姿見えもせず    光 ウ 放やるうづらの跡は見えもせず 男
 ドクターストップ力なき風    兔  稲の葉延の力なきかぜ     碩
煩悩を捨てずにこゆる古稀の坂   修 ほつしんの初にこゆる鈴鹿山   蕉
 内蔵助殿おおお蕎麦屋か     狸  内蔵頭かと呼声はたれ     州
卯の刻の湖岸に並ぶ釣りの馬鹿   奴 卯の刻の箕手に並ぶ小西方    碩
 松の根元で欠伸こらえて     寅  すみきる松のしづかなりけり  男
吟行の御隠居萩に苦吟され     蘭 萩の札すゝきの札によみなして  州
 百舌鳥の贄見てやおら矢立を   光  雀かたよる百舌鳥の一声   智月
平成の文武両道月読み男      兔 懐に手をあたゝむる秋の月   凡兆
 ニートになりて行方わからず   修  汐さだまらぬ外の海づら    州
吊革やステンにすがり花の朝    狸 鑓の柄に立すがりたる花のくれ 去来
 痰まきちらす蓬生の駅      奴  灰まきちらすからしなの跡   兆
競輪ですってんてんの春の日に   寅 ナ 春の日に仕舞てかへる経机  正秀
 種物乗らぬ饂飩立ち喰ひ     蘭  店屋物くふ供の手がはり    来
茶髪の子汗ぬぐいつつ走り来る   光 汗ぬぐひ端のしるしの紺の糸  半残
 間夫が逃げたぞ鶏小屋探せ    兔  わかれせはしき鶏の下    土芳
すきものが年甲斐もなき恋をして  修 大胆におもひくづれぬ恋をして  残
 腹筋すれば取所あり       狸  身はぬれ紙の取所なき     芳
押入れの月賦払いの健康具     奴 小刀の蛤刃なる細工ばこ     残
 猫と対話の大年の夜       寅  棚に火ともす大年の夜    園風
しのびつつ須磨ば都と明石けり   蘭 こゝもとはおもふ便も須磨の浦 猿雖
 手打ちしゃんしゃん良きに計らえ 光  むね打合せ着たるかたぎぬ   残
此夏も気にかかること温暖化    修 此夏もかなめをくゝる破扇    風
 車ねさせて月と歩いて      狸  醤油ねさせてしばし月見る   雖
第三の男と見ゆる隣かな      奴 ウ 咳声の隣はちかき縁づたひ    芳
 聞けば聞くほど謎の生立ち    寅  添へばそふほどこくめんな顔  風
身を隠し妻の織りける千羽織    蘭 形なき絵を習ひたる会津盆   嵐蘭
 明かりほのかに雪の降りける   光  うす雪かゝる竹の割下駄   史邦
花筏流れ行く先定まらず      修 花に又ことしのつれも定らず  野水
 ギター春風マイトガイ来る    狸  雛の袂を染るはるかぜ    羽紅

          2008.5.11〜6.22

写真:鞠子宿とろろ汁の丁子屋

2008年6月21日土曜日

汚ながり

年寄のライスカレーを汚ながり 規堂

板の間の粉も団子にこねる婆
てて親の草餅一つ義理で食ひ
愛むすめ吾のあたりを汚ながり

大学

大学へやれば酒呑む様になり  卜占

大学へ行くかとみせて麻雀屋
大学は休講札の花ざかり
休講に期待しつつもがつかりし
大学に行けど入れぬストライキ
大学へ年一回は試験に来
式なくて学士の証書とりに行く
大学を出ても書く文誤字ヘタ字


しかし、麻雀にのめり込みはしなかったが、情けない大学生活ではあった(^^;)

忘れる

二つ頼めば一つ忘れる付添婦  甲馬

そらんじて買物やつと三つまで
高速に乗つて気がつく忘れ物

2008年6月19日木曜日

長が付く

代表におされて妻に叱られる   竹荘

だんつくに長の付く役とってくる
長付いて伸ばしてみたがどぢやう髭

2008年6月18日水曜日

「不如帰」歌仙



    「不如帰」歌仙

 不如帰どよむ全山雨あがる    春蘭
  色増すあやめビロードの艶   みかん
 口元に笑みをかすかに浮かべいて 青波
  異邦人めくこのクラス会     亮 
 二日月はるばる来しがはや復路   み
  非情な梁にかかる落鮎      蘭
ウ 体育の日のざわめきのきれぎれに   亮
  うちの坊主はどこへ行ったか   波
 ○なのは当てずつぽうのまぐれだけ 蘭
  エンターキーで心機一転     み
 もう駄目だここまできたら後が無い 波
  月も嗤うよホットウィスキー   亮
 漬いたかな千枚漬をひとつまみ   み
  ぐうたら男改造計画       蘭
 パソコンの家計簿開きレクチャーす 亮
  裏の畑でポチが鳴いてる     波
 手をとられ導かれ行く花の闇    み
  うぶなふたりの萌える若草    蘭
ナ 我が妻の指差す方に春の虹      波
  大切なもの消えないように    亮
 宝前に額ずく猫の大欠伸      み
  余所見することなきや狛犬    蘭
 節穴の向こうに蒼い涙壺      亮 
  うれしいときも哀しい時も    波
 灯台のあかりにこたふ霧笛かな   蘭
  裕次郎ものまとめ放映      み
 ヨットマン湘南の海帆走す     波
  興奮醒めず浜木綿の道      亮
 プロボーズされてたづねるお月様  蘭
  おわら祭りのおぬしはヒーロー  み
ウ 山間のふたりの学舎秋深く      亮
  同い年だが姉の気分で      波
 別々の旅路の果ての再会に     蘭
  飽かず眺める東京タワー     み
 花開く日本列島桜色        波
  鐘は寿歌舞うは佐保姫      亮

    みかん 九
    青波  九
    亮   九
    春蘭  九

           2008.6.4〜6.18


写真提供:あやめはフォト蔵さん

2008年6月17日火曜日

知つて居ず

親切な巡査は地理を知つて居ず  雨眠

ほととぎす山の店主は知つて居ず
音花火地元の人は知つて居ず
道路工事するひと道を知つて居ず
地デジとは何か国民知つて居ず
日本人日本の歴史知つて居ず
人間は自分の寿命知つて居ず
人間はおのれの不知を知つて居ず
占ひ師自分の未来知つて居ず
父母未生以前の面目知つて居ず

宿題

宿題の此の辺迄は母も出来   牛歩

宿題をせぬに長じて羽振りよき
宿題のわけまへ来たり夏のすゑ 

2008年6月16日月曜日

のど自慢

のど自慢そんな世界もあるのなり  丹路
 ( 麻生路郎「川柳とは何かー川柳の作り方と味い方」)

のど自慢あとを伴奏追ひかける   
のど自慢これがほんとのマイウェイ(我が道をゆく)
のど自慢仕込まれてゐるうけねらひ
のど自慢どつと沸かせば熱演賞
のど自慢実は仲間の罰ゲーム
のど自慢恥は半分二人唱
のど自慢生きた証しの思ひ出に
のど自慢三つ出なくてレベル下げ
のど自慢そのほとんどはカン違ひ

2008年6月11日水曜日

心太




 あら何共なや期限の切れた心太 春蘭 あら何共なやきのふは過て河豚汁 桃青
 お足いただく顔の涼しき       寒さしさつて足の先迄      信章
 たまさかに友と出あへばみだるらん  居あいぬき霰の玉やみだすらん 京信徳
 今度の名字玉の輿石         拙者名字は風の篠原        青
 お近くに御出での節はお電話を    相應の御用もあらば池のほとり   章
 庭の川では岩魚養殖         海老ざこまじりに折節は鮒     徳
 名水と蕎麦で売り出す里の月     醤油の後は湯水に月すみて     青
 ふけて狐狸出る露のくさむら     ふけてしば/\小便の露      章



写真提供はフォト蔵さん

2008年6月9日月曜日

Piano Concerto


  雷と競ふかピアノ・コンチェルト



はまりつつあるピアノ・コンチェルトを聴いていたら俄に暗くなって物凄い雷雨になってきた。

写真提供はフォト蔵さん

花野


 さそはれて路ふみたがふ花野かな

 七月の花の香りにめまひする思ひのほかに遠き湿原  



 去年の夏のことだった。また二人していけるだろうか。

(短歌は連句で青波さんとの合作による)

2008年6月7日土曜日

山法師





 運動会きらふ子も居ろ山法師


隣の区に本を借りに行く。道すがら多くの学校で運動会をやっていた。私のように足の遅い子は徒競走はやだなと思っていることだろう。山法師が盛りだ。

写真提供はフォト蔵さん

2008年6月6日金曜日

万緑



  万緑や池に湧き出る水の音

  きらめきを青葉に照らす水鏡

2008年6月1日日曜日

自由連句『花みづき』の巻


   自由連句「花みづき」の巻

               2008.5.15〜6.1

発句  花みづき画廊は扉あけ放ち     春蘭
2    ふりかへり見る夏帯のひと     蘭
3   葦切の声に静寂の破られて     面白
4    夢の覚むれば捨舟の中       蘭
5   テレビでは棄てた故郷大写し     亮
6    のろまな月でも月は月です     白
7   日は釣瓶落とせどいまだ主見えぬ   蘭
8    お乳欲しがるこの子が可愛    青波 
9   ガガイモの茎を手折れば白き汁    白   
10   わたる列車に響よむ鉄橋      蘭
11  青空の下で愚かさ身を責める     亮
12   あわてふためく竹取翁       白
13  かもしかをてつきり熊と見違えて   蘭
14   稜線を行く黒影二つ        波
15  山男お先にどうぞと譲り合ひ     蘭
16   風呂の順番年長者から       波
17  流すもの流して明日はノーテンキ   亮
18   この世の未練その場限りに     波
19  ひつそりと浜辺にひらく花のごと   白
20   ぼくを見てゐる母のパラソル    蘭
21  降りてくるおばさん実は魔女だった  波
22   火を噴く煙突ものともしない    白
23  鳥でさえやすらぐ家はあるものを   蘭
24   乞食坊主は故里を出る       波 
25  泣いたりはしないで蟹とたはむれて  亮
26   不要品ばかり実人生は       白
27  本来ハ裸一貫無一物         蘭
28   スピード水着が勝ち負け決める   白
29  連盟よ国内企業の癒着断て      蘭
30   広告塔の滑る氷上         蘭
31  さういへばパンダの約束どうなつた  白
32   風に吹かるる風船蔓        亮
33  三十を過ぎても噂ひとつなく     白
34   親を悩ませ本人平気        波
35  選択肢あればあるほど迷つちやう   白 
36   けふはベージュのグロスルージュで 蘭
37  鱚、小鰭、鮨屋の湯呑み拭ふ女    白
38   ながら読みするミステリ原書    蘭
39  バッグには一日分の薬あり      亮
40   生き残る奴たぶん俺かも      白
41  飼い殺しむしろ上等マイウェイ    蘭
42   ネットサーフで時を忘れる     蘭
43  茶の間にてどこでもドアー開けてみる 波
44   知らなきゃよかった妻のお遊び   亮
45 「恋句」とは何のことやら五・七・五  白   
46   みのらぬうちが恋といふらん    蘭
47  山吹の面影橋で待ち合わせ      波
48   立ち添ふだけであかくなるきみ   蘭
49  携帯にキティちゃんやらベティちゃん 亮
50   殺し文句は「みんな持つてる」   白
51  収集はいはゆる一つの病気なり    蘭
52   居合いが好きで名刀が好き     波
53  海坂藩とある屋敷の床飾り      白
54   家が大事か自分が大事か      波
55  黒船に国論にはかに沸騰す      蘭
56   正直者はひっそりと住み      亮
57  借金をどうやら返し茶漬け喰う    波
58   なければないでおこるいさかひ   蘭
59  黄金の薔薇のトロフィー欧州に    白
60   日の丸鉢巻ニッポンチャチャチャ  亮
61  ジャワ更紗まとふ天使もやつてくる  白
62   市の屋台で済ます朝めし      蘭
63  エベレスト76(歳)に先越され   白 
64   ひそかに狙ふ喜寿の栄光      蘭
65  数値目標生きるよすがとするあはれ  白
66   然りわれらの十百韻も       白
67  もったりとありのままなる朝鏡    亮
68   星の王子よ砂漠より還れ      白
69  旅すれば大事なものが見えてくる   蘭 
70   未開の子らの輝く笑顔       波
71 「自由」より踵の鎖恋しかり      白
72   生まれ変はつてもまたあなたと   蘭
73  そういえば子供沢山つくったね    波
74   大鍋滾る激辛カレー        亮
75  インド人我が家で食べて驚いた    波
76   親はへつらひ児等はため口     蘭   
77  新聞は世相を映す水鏡        波
78   古き箪笥に裸婦の切り抜き     蘭
79  肌寒い季節になりて毛糸編む     波
80   こんな夜更けは寺山修司      亮 
81  寝てる間に一生涯の夢をみた     波
82   痛棒食らひ門を追はるる      蘭
83  歩いてる私こそが禅である      波
84   みな振り返るフレグランスに    白
85  霧雨の銀座銀巴里鼻濁音       亮
86   メケメケ男いまは三輪山      白
87  おとろへは隠さずままよと受け入れて 蘭
88   手児奈もその身ながらへたなら   白
89  ここはどこわたしはだれと言うだろう 波
90   アッカンベーがとってもお上手   亮
91  フェイスヨガ美人なれども鳥渡ひき  蘭
92   ガン保険など一考再考       亮
93  日光・月光ながき行列薬降る     白
94   飛沫を散らし走るタクシー     蘭 
95  正月の餅代稼ぐ為ならば       波
96   玉兎は幼き日の物語        白
97  きちきちが右へ左へとぶ野道     波
98   やがてタクトは静かに擱かる    亮
99  CDが一枚付いた花便り       波
挙句   いつせいに咲く北国の春      白