2008年7月20日日曜日

都々逸 

今も早よから太鼓をたたく隣家六十路のドラムすこ
隣家漏れ来る宴の奇声理解不能の多国籍
姉は口だけいもとが動く声のでかさは負けて居ず

むかし望んだ無用の人になれど銭なくひき籠り
老いて若いと言はれる妻のサプリをもらひ飲んでみる
尻が出てると気にする汝れをわれは可愛と恋初むる

2008年7月19日土曜日

都々逸


体が悪いぞ無職の欄はかっこ悠々自適とす (旧作)
寿司と我が家で呼んでるものは巻きと稲荷のパックなり
妻の財布の千円抜いてかさむ小銭を入れておく



写真借用:http://ekibento.jp/cb-mishima-sushi.htm

2008年7月17日木曜日

こんちきちん



鉾の稚児人形なりきこんちきちん


写真借用:http://www7a.biglobe.ne.jp/~kyonosato/gion00yamahoko00.html

2008年7月14日月曜日

「渡り鳥」歌仙

渡り鳥傘なきゃ雲の上にあり    狸
 虫の音哀し里の古寺       寅
やあやあと大きな月が顔出して   寅
 真冬の海を北へ流れる      狸
雪しづか百五十屯の雪像に     狸
 いつも通りの軽い冗談      寅
いいひとねそれで話はちよんとなり 蘭
 枕はずして大の字に寝る     奴
モナリザの二重の顎に恋をして   奴
 行列嫌ひがむしろ微笑み     蘭
ふるさとに許され妻子見せにゆく  蘭
 妙に静まる森のかなかな     奴
萩に沿う道のいつやら潮の風    奴
 掻い弾く琵琶の澄める夜の月   蘭
あゝうれし夢のお告げのとほりにて 蘭
 吉野の水のやや温むころ     奴
花守に墨衣着せ写真撮る      奴
 経読み谷をわたる鶯       蘭

ポケットに錆の浮き出たハーモニカ 智
 古き友よりうれしき誘い     正
七夕に願い事書きドン集う     正
 なにはともあれビールに枝豆   智
携帯にあなただけよとこのメロディ 智
 細々連呼あの浮名の音      正
なやましく姿態くねらせめおと猫  正
 ヒップホップでメタポ解消    智
代々木から渋谷に抜ける大通り   智
 ケヤキ並木を秋色に染め     正
月煌々勝閧橋は今跳ねず      正
 芸術祭の演目揃う        智
文化庁にぎにぎ少しありゃせぬか  修
 今も昔も同じしきたり      光
天の声雪降る夜は重く聞く     光
 意見はあるが言葉にならず    修
目覚めれば志野のぐい呑み花うけて 修
 春風似合う塩瀬羽二重      光

      首尾 2008.6.28〜7.14

2008年7月7日月曜日

みだれ髮(抄)  


    みだれ髮  
            鳳晶子

やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君
たまくらに鬢のひとすぢきれし音を小琴と聞きし春の夜の夢
牧場いでて南にはしる水ながしさても緑の野にふさふ君
ゆあみする泉の底の小百合花二十の夏をうつくしと見ぬ
くれなゐの薔薇のかさねの唇に靈の香のなき歌のせますな

春の夜の闇の中くるあまき風しばしかの子が髮に吹かざれ
わかき小指胡紛をとくにまどひあり夕ぐれ寒き木蓮の花
みだれ髮を京の島田にかへし朝ふしてゐませの君ゆりおこす
紫の紅の滴り花におちて成りしかひなの夢うたがふな
乳ぶさおさへ神祕のとばりそとけりぬここなる花の紅ぞ濃き

ひく袖に片笑もらす春ぞわかき朝のうしほの戀のたはぶれ
なにとなく君に待たるるここちして出でし花野の夕月夜かな
ゆあみして泉を出でしやははだにふるるはつらき人の世のきぬ
小傘とりて朝の水くむ我とこそ穗麥あをあを小雨ふる里
うながされて汀の闇に車おりぬほの紫の反橋の藤

ゆふぐれを篭へ鳥よぶいもうとの爪先ぬらす海棠の雨
かたみぞと風なつかしむ小扇のかなめあやふくなりにけるかな
小百合さく小草がなかに君まてば野末にほひて虹あらはれぬ
こころみにわかき唇ふれて見れば冷かなるよしら蓮の露
おもひおもふ今のこころに分ち分かず君やしら萩われやしら百合

むねの清水あふれてつひに濁りけり君も罪の子我も罪の子
みなぞこにけぶる黒髮ぬしや誰れ緋鯉のせなに梅の花ちる
くろ髮の千すぢの髮のみだれ髮かつおもひみだれおもひみだるる
夏やせの我やねたみの二十妻里居の夏に京を説く君
舞姫のかりね姿ようつくしき朝京くだる春の川舟
春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳を手にさぐらせぬ

2008年7月5日土曜日

「蛍獲て」百韻


  蛍獲て少年の指みどりなり       誓子
   河童でさうな村の夏川        春蘭    
  坂東太郎暴れ刀を振り上げて      青波
   髭を剃つたら意外美男子        蘭
  方言のこぼるるさまもご愛嬌       亮
   絵文字にはつか癒されてゐる     面白
  有明に霊感湧いて解読す         蘭
   虫売りの声聞きつつ眠る        波
ウ 目覚めては先ず一献に焼く秋刀魚     亮
   かひがひしさに身もぞ焦がるる     蘭
  十七の春をたすきで洗ひ張り       蘭
   記念日の今日摘むはサラダ菜      波
  野蒜食ふ僕はとつくにロハスだね     蘭
   シンプルが好き身辺整理        亮 
  向かふには一切合財もつてけず      蘭
   とげはあるけど薔薇は綺麗だ      波
  嫦娥出づ見なほすきみの初浴衣      蘭
   花火の音に近づける顔         波
  パレードにおとなも児らも夢心地     蘭
   明日の試験はいいさどうでも      波
  ニッポンのお城を飾る飛花落花      亮
   舞ひ込む蜂に沸ける婆沙羅座      蘭
二 野馬群れて小高い丘を疾走す       波
   眉くっきりとイザ戦さ場へ       亮
  マーメイド北京五輪は負けられぬ     波
   同じ条件かぎはメンタル        蘭
  息災に過ごす貴重な千羽鶴        亮
   イメージしようこの地球船       蘭
  緑あふれ大気あまやか我が故郷      波
   胡瓜トマトは山の朝採り        蘭
  腕白小僧よその畑で食べちらす      波
   服も体も泥で真つ黒          蘭
  祭りから帰ればみんないい女       波
   群れて愛らし桃色ペリカン       亮
  深閑として悠久の月の下         亮
   それよそれこそ宮城野の萩       蘭
ウ 虫々はこゑをかぎりと鳴いてをり     蘭
   我も負けずにコーリューブンゲン    波
  巻き舌のサザン休業なる話題       亮
   白け錆びたる浦の浜小屋        蘭
  波音を子守唄とし一眠り         波
   鳶が空からわれを見てゐる       蘭 
  謀られているやも知らぬノーテンキ    亮
   ピュアな思ひは人を動かす       蘭
  月天心貧しき町を通りけり    (蕪村)波
   からくれないに割れる実石榴      亮
  ちはやぶる神とも見えぬ竜田姫      蘭
   何を食べるか年をとらない       波
  薄墨の花はろばろと見上げおり      亮
   かすむや千代に雪の白山        蘭
三 田楽の味懐かしき峠茶屋         波
   ナナハン連ね老若男女         亮
  青春はこころに若さあるかぎり      蘭
   立って半畳寝て一畳    (織田信長)波
  わが城で茶漬けかけこみいざ出陣     蘭
   網タイツの脚どぶ板を踏み       亮
  破障子のぞく長屋の野郎ども       蘭
   えらい美人の嫁がきたらし       波
  かの子には一平がいたながい雨(時実新子)亮
   愛の地獄を越える大乗         蘭
  父母の星が見守る四川の子        波
   おなかいっぱい食べているやら     亮
  牡鹿啼く片山陰のゆふまぐれ       蘭
   配所の月に想う都を          波
ウ 栄転とだまされ来たる島の秋       蘭
   軒下を行く青大将           波
  きゃっとすがる君の重みを受けとめて   蘭
   上向き加減笑顔美し          波
  赤い道ゆけば群がるちまき売り      蘭
   自分を見つめ直す初旅         同
  鞄捨て杖一本で四国へと         波
   かつを漁師に海はゆりかご       蘭
  海神の吐息聞こえる月涼し        波
   昭和は遠くなりにけらしも       蘭
  反戦の思想封印された時         波
   ひそかに流行るリリーマルレーン    亮
  花開き静かに眠る子を悼む        波
   風の光ればこころ鎮もる        亮
名 うぐひすにゆかしくなるや雑木山     蘭
   歴史の道にすみれ草咲く        波
  ここがその都の跡か燃ゆる野馬      蘭
   独りの時間独りの至福         亮
  写し彫る利休泪の竹茶杓         蘭
   雨の降る日は雨を見つめて       波
  ピストルを一発胸に受けて恋       亮
   親の縁談蹴って駆け落ち        蘭
  考えたどうせ行くなら地の果てへ     波
   砂漠のリビア・ビルがニョキニョキ   亮
  オアシスはひとそれぞれの憩ひの場    蘭
   二度と会えない人と会うかも      波
  月光にこころの底を覗かれて       亮
   閃光きらめき妖剣の露         蘭
ウ ほろほろと首が落ちるか秋の暮      波
   回転ドアはスコンと回る        亮
  頭越し子分は所詮らちのそと       蘭
   現世精進来世往生           波
  チンチラを抱いてざあます血統書     亮
   散歩にドレスとくと紅引く       蘭
  花見坂美男と美女の勢ぞろい       波
   のどかに過ぐる春昼の夢        亮

        首尾 2008.6.2〜7.5



写真提供はフォト蔵さん