2009年6月10日水曜日

独吟歌仙『古池や』の巻


     歌仙『古池や』の巻
                     
   古池やかはづ飛びこむ水の音   芭蕉
     背筋を正し春の新服     春蘭
   そうりやうの入学式は天晴れて   同
     要所だけ見てたゝむ朝刊
   ひもすがら苦吟をすれば疾うに月
     理解のできぬつまの冷やか
ウ  ヌード画のけつこう多い美術展
     ふいに縋られ重き片そで
   あし長き波のときをり打ち寄せて
     こくり舟漕ぎはつと驚く
   留守電の釦を押してするゝすゐ
     隣近所は犬の無駄吠え
   物干に胡瓜なすびの苗育ち
     月を擁して明かる山際
   褒められてけふも飯炊き竈の番
     きつと未来を助く一芸 
   シートとて酔へば上等花座敷
     黄金週間ロスへ飛び立つ
ナ  研修も実に長閑なものもあり
     あかず眺める雲のうつろひ
   ちちははのいぬるふるさとかはりなく
     雨にあを濃し寺のあぢさゐ
   知らぬ道行つてみるのも面白き
     たわゝな蜜柑塀にかほ出す
   こつそりと見初めしひとの後つけて
     折り枝添へておくる恋文
   シンプルに短いフレーズ繰り返し
     人心つかみトップ交代
   望の月おなじ話題の局ばかり
     猫抱き椽で聴くは蟋蟀
ウ  哀れ蚊をそつとかいやる捨て団扇
     板についたり老いの清貧       
   うけ売りの論をさまざま取りまぜて
     愚に遊ぶべし歌仙一巻
   花の下連れのかんばせほのあかく
     われも同じくこころ麗らか

          2009.6.5〜6.10


写真提供はフォト蔵さん

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