2009年9月30日水曜日

百韻『うつせみの』の巻


    百韻『うつせみの』の巻
                 2009.8.2〜9.30

発句 うつせみの瞳に空のかげりかな  虚空  夏
 2   遠い太鼓にともす蚊遣火    百  夏
 3 呼ばれてる様な気がして旅に出る 青波
 4   姿を映す北の湖        百
 5 モンゴルの神に駿馬を賜らん    空
 6   千里を走り汗もかかない    波  
 7 草原に真っ赤な月の出ていたる   百  秋月
 8   敬老の日の朝は爽快      空  秋
ウ  
 1 見頃にはちょっと早いか萩の寺   波  秋 
 2   自分好みにむすめ育てん   春蘭
 3 結局は父に似た人好きになり    百  恋
 4   駅の出迎え街で評判      蘭  恋
 5 物語リメイクされて里帰り     百
 6   鬼の居ぬ間にサイフ補給す   蘭
 7 ふらここのすこし揺れてる夕まぐれ 百  春
 8   不覚の涎醒むる春眠      蘭  春
 9 朧月池に映りてなほおぼろ     百  春
10   たよりしたくも名さえ明かさず 蘭
11 長身の男だったという噂      波
12   検査次第でメダル剥奪     蘭  
13 ヒーローの笑顔満面花やかに    蘭  花
14   女が一人陰で泣いてる     波  恋
二オ
 1 帰る日のわからぬままに鳴る汽笛  蘭
 2   シベリアの地に強制労働    百
 3 春来れば土のぬくもり感じ取る   波  春
 4   何処より出づや蝦蟇の鳴く声  蘭  春
 5 あちこちに庭に無かった華鬘草   百  春
 6   なにやら言つては留守がちの妻 蘭  
 7 夕方になるとソワソワ夜釣りかも  波
 8   夜の沼には妖怪伝説      百
 9 狂恋の夢に覚めたり宿の月     蘭  秋月
10   止むとも見えずすだく虫の音  蘭  秋
11 太極拳ポーズを決めて投票す    百
12   鉛筆削る古い小刀       百
13 ほとんどは子の作文を親が書き   蘭
14   新聞に出て口数が減る     蘭
二ウ
 1 エベレスト登頂はしたがゴミを捨て 波
 2   毎日たべるレトルトカレー   百
 3 アクティブな妻や夜までほつとかれ 蘭
 4   ボタンちぎれた新春写真    百  新年
 5 吾子がためがぜん張り切る歌留多取 蘭  新年
 6   薄紅梅の蕾膨らむ       百  春
 7 淡雪に濡れてほほゑむ観世音    蘭  春
 8   無住の寺を狙う盗人坊主    百
 9 山奥の居ついた村に三分の理    合
10   素性を聞けば平家おちうど   蘭
11 ビル街の遅き月の出夜勤入る    百  秋月
12   泡立ち草がブルーシートに   合  秋
13 花相撲ただ見もできる河川敷    蘭  秋花
14   産むも育つも国家政策     百
三オ
 1 なんやかや絶滅危惧種が増えている 蘭
 2   連歌師と言う名も消えかかり  百
 3 百年の海産問屋ケーキ売る     波
 4   男たちにも別腹のあり     百
 5 かいしょうがあれば数多の嫁を持ち 蘭
 6   縄文よりも弥生は野蛮     合
 7 逆説も考えようで真説に      波
 8   山里の春小海線行く      百  春
 9 霞めども仰げばいまだ白き嶺    蘭  春
10   角帽好きな新入園児      合  春
11 銅像の大隈公は佐賀藩士      百 
12   がばいばあちゃん孫を見に来る 波
13 ある筋で夫婦そろってお縄にて   蘭
14   月影寒く照らす路地裏     波  冬月
三ウ
 1 からすとて家に帰へらば子もあらん 蘭
 2   頭脳明晰漆黒の髪       波 
 3 世が世なら琉球王朝の王女とか   蘭
 4   故里思い涙そうそう      波
 5 野ざらしも辞さぬ先達追慕して   蘭
 6   一句詠んでは酒を一合     波
 7 人生は今ぞ楽しく謳歌せよ     蘭
 8   汲めども尽きぬ泉ありけり   百
 9 月の夜水飲んでいく蒼き馬     波  秋月
10   ぴたりとやみぬ土間の蟋蟀   蘭  秋
11 ときどきは思い出話などいかが   亮
12   カフェのテラスに積もる花びら 蘭  春花
13 くぐもっていつもの枝に抱卵期   百  春
14   巣立ちに未練なきはあつぱれ  蘭  春
ナオ            
 1 置手紙一つ残して汽車に乗る    波                 
 2   持った荷物は名刀一振り    波
 3 どんぶりで御殻かっこむ素浪人   蘭
 4   黙っていれば男前ねぇ     蘭
 5 手品師の種が途中で見破られ    百
 6   嘘をつくとき頬がピクピク   波
 7 うろ覚え結果的には朝帰り     蘭
 8   車内値踏みの視線交錯     蘭  
 9 颯爽と立ち呑み場にもハイヒール  亮
10   本命実は渋いマスター     蘭  恋
11 二人とも登山が好きで猫が好き   波  恋
12   友の笑顔で埋まる空白     蘭
13 月光に妖精も来て踊りだす     亮  秋月
14   ルビーの如き対は鹿の眼    蘭  秋
ナウ
 1 隣より味噌かりてくる秋深し    百  秋
 2   あゝ美しき茜空かな      蘭    
 3 満州の広野の話父はるか      亮
 4   鏡のなかに笑まふ面影     蘭
 5 頼まれて衣装合わせに付いて来た  波
 6   本番思いもうなみだぐむ    百
 7 花の窓こゑのそろはぬ卒業歌    蘭  春花
 8   淡雪解けて水温む頃      波  春


写真提供はフォト蔵さん

2009年9月29日火曜日

芭蕉の軽み(問題提起)

  わびさびてしをるほそみのみのかるさあたらしみこそふえきりうかう 春蘭
  (侘び寂びて萎をる細みの身の軽さ新しみこそ不易流行)

問題提起:
 芭蕉が次々と打ち出していった俳諧の美的様相の理念、覚えるために昔、歌にしてみた。このうち、軽みは特に難解で、芭蕉の門人の多くも付いて行けず脱落離反していったようだ。付いて行けたと思っている門人も芭蕉からみてどうだったのか、そもそもその芭蕉自身は自分が追い求めるものをわかっていたのか、芭蕉が考えていた軽みとは何かちょっと調査研究してみようか。

■序説
 まずは他人の研究成果を借りて
  かるみの近代序説
  軽み論争について―老後の初心


つづく
芭蕉の軽み(情報収集)

2009年9月27日日曜日

華甲

 ゆきかかるわが足つかむ臥せし妻  

 月花は華甲をすぎておもしろき


※ 華甲(かこう) :華の字は十が六つと一から成るので六十一、甲は甲子で=還暦。
※ 耳順(じじゅん):孔子の論語為政篇「六十而耳順」(六十にして耳順う(したがう))=還暦

2009年9月26日土曜日

井月の歌仙



『井月の俳境』宮脇昌三より

2009年9月22日火曜日

井月の地発句・裏白俳諧



(新発見の短冊でオークションに出たもの「暮しよき家や柳の下流れ 井月」か。お世辞たっぷりで宿泊や酒食のお礼に書いたものだろうか。あるいは井月は自分の雅号を柳の家とも書いており、自分の住まいを気に入っていたのか。)


降とまで人には見せて花曇

誰をまつこころの奥や山さくら
旅ごろも恥つつ花の筵かな
散込やさくらの窓の細めなる
翌日しらぬ身の楽しみや花に酒
鬼灯を上手にならす笑くぼかな
色白や鬼灯はさむ耳のたぶ
若鮎や背すじゆるさぬ身のひねり
落栗の座を定むるや窪溜り

米負ふて登る湯道の暑さ哉     其翁
    滝にこころのゆるむ汗の香 井月
札つけし当歳駒の居眠て      其翁
    手を打てすむ仲間勘定   井月
まちまちに三日月拝む黄昏に    其翁
    あすの支度の見ゆる朝顔  井月

晴たれば声猶高しほととぎす    野笛
    雫重げに見ゆるわか竹   井月
米積し船の四五艘帆を揚て     野笛
    遠くへひびくから臼のうた 井月
豊さの鍬をかたげて畑の月     野笛
    黒漬売に宿を貸す秋    井月

以上引用は、『井上井月伝説』江宮隆之 
※ こういう表(歌仙なら6句、百韻なら8句)だけで終わる連歌・俳諧を裏白連歌、裏白俳諧と呼ぶ。懐紙の裏に句が書き込まれないので白いから。
 
用のなき雪のただ降る余寒かな 
遅き日や碁盤の上の置手紙
春雨や心のままのひじ枕
富士にたつ霞程よき裾野かな
何処やらに鶴の声聞く霞かな
淡雪や橋の袂の瀬田の茶屋
山笑ふ日や放れ家の小酒盛
手元から日の暮れゆくや凧
舟を呼ぶこゑは流れて揚雲雀
春風や碁盤の上の置き手紙
山笑ふ日や放れ家の小酒盛
手元から日の暮れゆくや凧
今日ばかり花もしぐれよ西行忌
乙鳥や小路名の多き京の町
寝て起て又のむ酒や花心
梅が香や流行出したる白博多
春風に待つ間程なき白帆哉
風涼し机の上の湖月抄
岩が根に湧く音かろき清水かな
水際や青田に風の見えて行く
涼しさの真ただ中や浮見堂
寄せて来る女波男波や時鳥
玉苗や乙女が脛の美しき
塗り下駄に妹が素足や今朝の秋
秋風や身方が原の大根畑
飛ぶ星に眼のかよひけり天の川
名月や院へ召さるる白拍子
芋掘りに雇はれにけり十三夜
よみ懸けし戦国策や稲光
駒ヶ根に日和定めて稲の花
初時雨からおもひ立首途かな
時雨るや馬に宿貸す下隣
松の雪暖かさうに積りけり
鷹匠の涕すすり込旭かな
酒さめて千鳥のまこときく夜かな
明日知らぬ小春日和や翁の忌
旭は浪を離れぎはなり鷹の声
目出度さも人任せなり旅の春
初空を鳴きひろげたる鴉かな

以上引用は、現代俳句抄さん

井上井月については、ウィキペディア

歌仙「秋桜の海」の巻



    歌仙「秋桜の海」の巻
                 9月7日〜9月21日
 
 1 秋桜の海に溺れてみたい午後     シアラ 秋
 2   蜻蛉を追う子等の歓声      みかん 秋
 3 群青の山際仄か月出る        草栞  秋月
 4   友の便りは句集上梓と      百
 5 糠味噌にきゅうり仕込んで小休止   蘭
 6   刻み変調メトロノームは     鉄線

 1 この辺で大きなことをやりたいと   青波
 2   夫婦別姓実行にうつす      シアラ
 3 You&Iいいカンケイを保ちたく  線
 4   鳩吹く声に集う黄昏       栞   秋
 5 名月の大樹の梢鎮まりて       百   秋月
 6   深まる秋に自分重ねる      蘭   秋
 7 秋蝶は流され気味に飛んでいる    波   秋
 8   触れても落ちぬ高跳びのバー   みかん
 9 六本木セレブにキメて独り飲む    シアラ
10   夢はうたかた浄瑠璃絵巻     鉄線
11 花の頃義経いかにおわすやと     波   春花   
12   春の川瀬に裳裾をぬらす     百   春
ナオ 
 1 茶摘み女もペットボトルで喉癒し   栞   春恋
 2   後朝の文携帯で読む       波   恋
 3 仮名文字と絵文字の好きな肉食系   線   恋
 4   紅ひいてからインフルマスク   百   恋
 5 行き先を娘は白らばくれ冬の月    蘭   冬月恋
 6   ああすれ違いそれも人生     栞
 7 改革は任せてくれと宇宙人      みかん
 8   白目を剥いて六法を踏む     波
 9 宵涼しオペラ座公演メルシー・ボクー 線   夏
10   舞踏に狂じる夏の夜の夢     シアラ 夏
11 岬道発電風車ブーンブン       みかん  
12   旅に雲水なにか得たるや     蘭
ナウ    
 1 かぐわしき大地の輪廻繰り返す    栞 
 2   十四匹の鼠春待つ        波   冬
 3 こんな日は羊羹厚く渋茶入れ     百  
 4   地上波初のおくりびと見る    シアラ
 5 隅田川スカイツリーは花の雨     線   春花
 6   ゆたにたゆたに残り鴨浮く    蘭   春

                 (捌き みかん)

写真提供はみかんさん

2009年9月20日日曜日

金峰山行



金峰山行
9月18日、石榴木君と合流して金峰山(2599m)に登る。
3時半に起きおにぎりを作る。4時大泉をスタート。野辺山から川上村に入る。真っ暗な中電気を付けてレタスを収穫しているのには驚いた。5時前に廻目平に着く。まだ薄暗い。もう少し明るくなるのを待つ。ここはロッククライミングのメッカとか、岩山が目立ちヨセミテ公園みたいだ。

廻目平(金峰山荘) 5:31   所要時間  標準
中ノ沢出合     6:20   0:49(1:20)
金峰山小屋     8:30   2:10(1:50)
金峰山山頂     9:05   0:35(0:20)
              小計 3:34(3:30)
休憩&昼食 
金峰山山頂    10:40
金峰山小屋    10:54   0:14(0:15)   
休憩     
金峰山小屋    11:04   
中ノ沢出合    12:27   1:23(1:15)
休憩
中ノ沢出合    12:44
廻目平(金峰山荘)13:40   0:56(1:00)
              小計 2:33(2:30)
              合計 6:07(6:00)

ほぼ標準時間で登った。金峰山小屋に向かう急登で薪を2、3本ずつ小屋に運んでやろうとしてペースを乱し時間を食った。 山の上は紅葉が始まっている。360°の絶景だ。こんな景色を見ては山登りをやめられないと出会った青年が感動している。大弛峠から2時間で来たという。そんなルートがあったんだ。この前登った瑞牆山がはるか下に見えた。

飯盛山から瑞牆山、金峰山を望む

蕎麦の花


去年よりも山田減りけり蕎麦の花  
                      大泉   9/3

とほくよりこゑをあげつつよるかもにやるものなくていけべはなれる
(遠くより声をあげつつ寄る鴨にやるものなくて池辺離れる)
                      長坂湖  9/4

かいげんじかいそをしのぶふるてらのこだかきおかのあきくさのなか
(甲斐源氏開祖を偲ぶ古寺の小高き丘の秋草の中)
                      清光寺  9/4

どういうわけか境内に芥川龍之介の句碑があった。(あとで調べたら、ここで芥川は文芸と人生というテーマで夏期セミナーの講義をしたとかー八ヶ岳検定より)

  藤の花軒端の苔の老いにけり     芥川龍之介

らふそくにあじもうつろになるゆふげしばししのばんやまのいなづま
(蝋燭に味もうつろになる夕餉しばし忍ばん山の稲妻)
                      大泉   9/4

山はまだ青し田ははや黄金色
                      増富   9/11

秋山紀行



秋山紀行

9月5日、鈴木牧之の『秋山記行』と『北越雪譜』を読んで以来憧れていた秋山郷を訪ねた。豊田飯山ICで降り千曲川沿いに北上し新潟県の津南に向かう。

  秋桜やしるべに頼む千曲川

見玉不動尊の看板が目に入り詣でる。眼に御利益があるとか。階段脇にほとばしる滝の清水で眼を洗った。山門前の店で橡餅とおやきを食べる。三十種類ほどの漬け物や珍味をお茶とともに名物おばあさんが振る舞ってくれた。

  橡の実を拾へば濡れる滝しぶき

秋山郷は西方を急峻な鳥甲山、東方を苗場山に挟まれた南北に長い峡谷で中津川が流れている。その昔と変わらず十にも満たない小さな集落が点在するだけである。ところどころ行き違いのできない道がある。その道の崖には萩が道を狭めるように咲いている。

  幽谷はゆつくり走れ萩の花

取り付くところがないところだなと思いながら進む。やがて谷底にある宿の屋敷温泉に着く。平家の隠れ湯とある。聞けばここが平家の落人がはじめに住み着いたところで飢饉で消滅した村も近くにあるという。

  網戸開けとんぼ逃がせし隠れ宿

  山深み川音の絶へぬ秋山に飢饉に消えし村もあるとは

夕食まで時間があるので先の上の原集落に行ってみる。のよさの里という湯宿がある。天池から苗場山が望めた。霧雲が山を隠そうとしている。

  夕霧や峰を隠すか苗場山

屋敷温泉の夕食は岩魚と山菜だ。まかないのおばあさんに、のよさの意味を聞いたがわからないと歯のない口で笑った。(注 ネットで調べると、説1:野の良さ、説2:野泉鉄(のよさ)とか、信憑性は今一。)

何やら(星野?)短歌の会の御一行様が深夜、早朝もうるさくてほとんど寝られず。隣の若夫婦はたまらず部屋を変えてもらったらしい。御一行様の中でも若目できれい目なお方がトイレ前で、おはようございますと微笑んでくれたので許してやろうw

秋山郷の一番奥に牧之が入った切明温泉がある。その湯宿は流されたという。足湯でくつろいでいると、歌の会の御一行様もやってきた。先頭に立って一行を引っ張っている白髪の老人が主宰か、やはり人一倍興味旺盛なのだろう。

  牧之入りし湯宿はどこか尋ねればとうの昔に流されたと言ふ

奥志賀林道経由で志賀高原に向かう。

2009年9月2日水曜日

我も紅

   還暦に赤シャツ着され我も紅

やや臭いが吾亦紅の歌が団塊の世代にしみるというのは自分自身が紅(還暦)になったからか。


語源はウィキペディアさん
歌はYouTubeさん

2009年9月1日火曜日

諸派閥も小さくなりぬ秋の風



諸派閥も小さくなりぬ秋の風



写真提供は読売新聞さん