2009年9月22日火曜日

井月の地発句・裏白俳諧



(新発見の短冊でオークションに出たもの「暮しよき家や柳の下流れ 井月」か。お世辞たっぷりで宿泊や酒食のお礼に書いたものだろうか。あるいは井月は自分の雅号を柳の家とも書いており、自分の住まいを気に入っていたのか。)


降とまで人には見せて花曇

誰をまつこころの奥や山さくら
旅ごろも恥つつ花の筵かな
散込やさくらの窓の細めなる
翌日しらぬ身の楽しみや花に酒
鬼灯を上手にならす笑くぼかな
色白や鬼灯はさむ耳のたぶ
若鮎や背すじゆるさぬ身のひねり
落栗の座を定むるや窪溜り

米負ふて登る湯道の暑さ哉     其翁
    滝にこころのゆるむ汗の香 井月
札つけし当歳駒の居眠て      其翁
    手を打てすむ仲間勘定   井月
まちまちに三日月拝む黄昏に    其翁
    あすの支度の見ゆる朝顔  井月

晴たれば声猶高しほととぎす    野笛
    雫重げに見ゆるわか竹   井月
米積し船の四五艘帆を揚て     野笛
    遠くへひびくから臼のうた 井月
豊さの鍬をかたげて畑の月     野笛
    黒漬売に宿を貸す秋    井月

以上引用は、『井上井月伝説』江宮隆之 
※ こういう表(歌仙なら6句、百韻なら8句)だけで終わる連歌・俳諧を裏白連歌、裏白俳諧と呼ぶ。懐紙の裏に句が書き込まれないので白いから。
 
用のなき雪のただ降る余寒かな 
遅き日や碁盤の上の置手紙
春雨や心のままのひじ枕
富士にたつ霞程よき裾野かな
何処やらに鶴の声聞く霞かな
淡雪や橋の袂の瀬田の茶屋
山笑ふ日や放れ家の小酒盛
手元から日の暮れゆくや凧
舟を呼ぶこゑは流れて揚雲雀
春風や碁盤の上の置き手紙
山笑ふ日や放れ家の小酒盛
手元から日の暮れゆくや凧
今日ばかり花もしぐれよ西行忌
乙鳥や小路名の多き京の町
寝て起て又のむ酒や花心
梅が香や流行出したる白博多
春風に待つ間程なき白帆哉
風涼し机の上の湖月抄
岩が根に湧く音かろき清水かな
水際や青田に風の見えて行く
涼しさの真ただ中や浮見堂
寄せて来る女波男波や時鳥
玉苗や乙女が脛の美しき
塗り下駄に妹が素足や今朝の秋
秋風や身方が原の大根畑
飛ぶ星に眼のかよひけり天の川
名月や院へ召さるる白拍子
芋掘りに雇はれにけり十三夜
よみ懸けし戦国策や稲光
駒ヶ根に日和定めて稲の花
初時雨からおもひ立首途かな
時雨るや馬に宿貸す下隣
松の雪暖かさうに積りけり
鷹匠の涕すすり込旭かな
酒さめて千鳥のまこときく夜かな
明日知らぬ小春日和や翁の忌
旭は浪を離れぎはなり鷹の声
目出度さも人任せなり旅の春
初空を鳴きひろげたる鴉かな

以上引用は、現代俳句抄さん

井上井月については、ウィキペディア

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