2010年2月28日日曜日

萱草第六 雑連歌(三)




2007年05月22日19:53

京都大学附属図書館所蔵 古典籍 『萱草』(わすれぐさ)


 まくらの露や又しぐるらむ
あかつきの木葉すき行(ゆく)柴の庵

 夕川の月はふたつの影ありて
ゆく水さむく日ののこるやま

 草木をみるも心こそあれ
ふかき野やかり場の鳥をかくすらん

 千どりなきたつ雪のくれかた
野をせばみ御かりの人のさはぐ日に

 文のたよりにいるはりぞある
ともし火とたのむばかりの窓の雪


 いかにして都をおもひはなれまし
春をくらせば又あきの月

 すすむる酒に夜半ぞ深(ふけ)行
あかなくに月はかくれて山もうし

 うちかすむ雲ゐの御階まうのぼり
弓はり月にむかふ山のは

 をよびなき歌に心を猶かけて
月にあはれむあかつきの雲

 春と秋とにうつろひにけり
ほしまつる夜はのともし火影そへて

 涙にみればおほぞらもうし
わが年の星いつまでかめぐるらん


http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/k107/image/1/k107s0061.html



  旅の連歌の中に
 なげかすはたびのつらさやなからまし
とをき門出の涙おとすな

 世のあはれをもおもふあかつき
しらずこのわかれやかぎり旅の空

 関のひがしの山ぞはるけき
あふ坂やこえていつみむ冨士の嶽

 涙もくももたえだえにして
なぐさめと都の山やみえぬらん

 後のあしたぞいとどかなしき
きのふまで故郷見えし山越て


 わかれのあとの月ぞかたぶく
かりねせし高嶺を今朝は雲にみて

 こころぼそさのまさる夕暮
雲鳥をしる人にする山こえて

 身の行すゑを思ふあはれさ
草木だにしるはまれなる山越て

 たましゐさへに身にそはぬ頃
雲くらき夜の山路に神なりて

 情ある人を親とやたのままし
くれて宿とふかたをかのさと 


http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/k107/image/1/k107s0062.html



 こころさびしくとまる山みち
すまはやな旅に我とふ柴のいほ

 旅の門出をいそぐこゑごゑ
夜はのやど鶏なけば犬ほえて

 いづみとかやもちかき難波津
鐘はたがたびねの夢にかよふらん

 かすめるさとの人のよそほひ
たびまくらかれ飯(いひ)いそぐ火はみえて

 まなべるみちに人いそげかし
関の戸や鳥のそらねに明ぬらん

 夜ふかき山におもふいにしへ
こえかたき関にそらねの鳥もがな


 思ひやるこそおもかげになれ
かへらずばせめて都を忘ばや

 ものうきみちはゆきもやられず
かへりても都や我はたびならん

 あすのいのちもしらぬ恋しさ
かりそめと都を出し身の古(ふり)て

 ひきつひかれつ袖したふなり
おりのりのかはる舟人綱とりて

 夕かぜあらき川づらのさと
あしそよぐ陰にを舟やとまるらむ


http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/k107/image/1/k107s0063.html

0 件のコメント: