2010年9月13日月曜日

一茶の連句 一

  冬  初雪や畳の垢の目にかゝる    春耕
  冬   一市過てむら千鳥鳴      一茶
  春  舞々が迹のまひから春立て    同
  春   倒れし梅を人にみらるゝ    成布
  春月 むもれ水おぼろ月夜となるままに 春
  春   笠の祝ひの餅やつくらん    茶
ウ    魚買に越の女の馬引て      布
      赤い御門の昔恋しき      春
  夏  蚊やり火に草をかぶせてしのぶ也 茶
  夏   ばらばら雨にひらく夕顔    春
     鶏の嘴より起る小いさかひ    茶
      けふはから手でもどる乞食   布
  秋月 島舟にきよろりと月のさしかゝり 春
  秋   庭一ぱいに木実ひろげる    茶
  秋  吹風にこゝろ冷つく遠ぎぬた   布
      三かさの山のうつくしき形り  春
  春花 はつ花のちる日/╲を侘ならひ  茶
  春   蝶もとべよと芝に眠れる    布
ナオ春  雲雀鳴名古屋へ駕の値が成て   茶
      幕のうちなる声のやさしき   布
     朝々の膳に涙のかゝる哉     茶
  冬   丗日神楽に交る木がらし    布
     一里は貢の菰の荷拵ひ      茶
      長と呼れて酒をたふるゝ    布
  夏  涼しさは菊も見事に咲にけり   茶
      榎の虻のつかむ程なく     布
     親もたぬ児のづんづと伸過て   茶
      後の咄に豆煎を出す      布
  秋月 少づゝさむく成たる宵の月    茶
  秋   たゞ四五人の踊也けり     布
ナウ秋  大葡萄ぶどうの番の念仏して   知一
      駿河だよりにかへすかな槌   茶
     夕鐘の片々暮て水明り      同
      薮のあちらに家鴨おひ込    布
  春花 塩からき団子の砂も花の山    一
  春   三月七日陽炎の立       茶     

引用:『一茶の連句』高橋順子 
『連句のたのしみ』の著者。一茶が一座した250巻の連句のうち6巻を評釈する。底本は『一茶全集 第五巻』信濃毎日新聞社。ちなみに芭蕉が生涯で一座した連句は340巻、蕪村112巻。

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