2011年11月18日金曜日

第三千句 第三百韻『この道や』の巻



       百韻『この道や』の巻 
                   2011.10.31~11.18
        
発句   この道やゆく人なしに秋の暮     秋  芭蕉
脇      熟柿一つの残る老木       秋  風牙
第三   茅屋に二夜の月は冷まじき      秋月 私  ふたよ
4      砕け散れとて砧打ちけり     秋  ね子
5    目くばせはジャムセッションの合図にて   草栞
6      億万の民に新た産声          禾
7    漠とした不安を煽るマス・メディア     私
8      砂金人夫の額汗ばむ       夏  牙

9    河童忌に河童の木乃伊掘り出され   夏  ね
10     極楽行きの切符得難し         栞
11   うぐひすの声ぞ身にしむ朝ぼらけ   春  私
12     開き初めた花が見送る      春花 ね
13   春嶺の向こうに馳せる想いあり    春  牙
14     俤人を慕ふ姫君         恋  栞
15   曼荼羅の絵解きに双耳かたむけん      禾
16     鐘の音にて覚る空腹          私
17   紙屑となるかならぬか正念場        牙
18     鞭が入った東京優駿       夏  氷心
19   定年ののちの昼寝が待ち通し     夏  ね
20     ようやく名前呼ばる職安        牙
21   うずくまる数十の目の冷たさよ    冬  心
22     凍てつく空に星の揺らめき    冬  栞
二オ
23   つなぐ手をたもとに隠し初詣    新年恋 私
24     思ひ寄するは親友のカレ     恋  ね
25   萌え出でし隣りの芝の煌めきて    春  心
26     物干しに吹く風も梅が香     春  私
27   新茶にてさらりと茶漬け酒の締め   春  牙
28     客人帰す技の数々           ね
29   魔法ならいとも簡単暗示かけ        栞
30     貴女なしでは夜も日も明けぬ   恋  心
31   義理チョコを本命と過大評価して   恋  私
32     自慢話の咲くガード下         牙
33   靴磨きしながら学ぶ処世術         禾
34     洟水拭う制服の袖        冬  心
35   夜鷹蕎麦メット忘れし月の客     冬月 牙
36     おやじ、一本付けてくんねえ   冬  私
二ウ
37   転勤に独りで行けばと妻子いい       私
38     駅に迎えの愛おしいひと     恋  心
38     部屋に戻れば文鳥が待つ        ね
39   七夕の逢ふ日に止まぬ電話あり    秋恋 ね 両句に
40     月見ればなほ千々に乱れぬ   秋月恋 栞
41   秋の蝶一対だけの舞踏会       秋  牙
42     錦あやなす山の粧ひ       秋  私
43   注文の多さに惑ふレストラン        栞
44     先にシャワーを浴びてきてねと     牙
45   怪しげな温泉街の看板に          ね
46     絶ゆることなき凩の音      冬  心
47   塗り立てのペンキに枯葉貼りついて  冬  禾
48     妻の指図で動く永き日      春  私
49   愉しみは花よりほかに知りもせず   春花 栞
50     欠伸をすれば山笑ひをり     春  心
三オ
51   授業中猫のパラパラ漫画描く        牙
52     いよいよ司法試験あやふし       ね
53   金せびる嘘にみがきがかゝる息       私
54     神運尽きて尻も拭へず         栞
55   外つ国のトイレ事情に戸惑ふて       牙
56     川を覗けば美味そうな魚        心
57   世の中は儘ならぬもの酔ひつぶれ      ね
58     天動説を僕は支持する         牙
59   振り仰ぎ月の光に濡れる夜      秋月 禾
60     をわら踊りの女艷めく      秋  私 なまめく
61   寂しげに見送る母に曼珠沙華     秋  牙
62     旅はいつでも帰途の物憂し       私
63   車窓には更に太ったソクラテス       心
64     アクロポリスで選挙演説        ね
三ウ
65   高みより天下睥睨王気分          私
66     行く手阻むは雲の峰にて     夏  栞
67   波乗りの立てずに終わる日暮れなり  夏  牙
68     ジョニーとマリーさよならのキス 恋  心
69   遠からぬ破局の予感高まつて     恋  私
70     吸殻ばかり溜まる灰皿         牙
71   重税を納め寿命を縮めたり         ね
72     子等のためにと建てたアパート     牙
73   無いなりに遺産分割難しき         私
74     寒靄こめる限界集落       冬  禾
75   気がつけば圏外孤独の冬景色     冬  栞
76     凍土の中で眠り続ける      冬  牙
77   花嫁の姿のままで永遠に       花  ね
78     ベスト・ショットを油絵にする     私
ナオ
79   一つだけ何か違和感インテリア       牙
80     当節ネットで稼ぐへそくり       禾
81   定年後時間ばかりがありあまり       私
82     日曜大工の腕はあがらず        ね
83   そのはずよ月月火水木金金         禾
84     波止場波止場に待つ女のいて   恋  栞 ひと
85   聞こゆるは須磨の嵐か筝の音か    恋  禾
86     こゝろの波の騷ぐゆふぐれ       私
87   先着で生ビール直ぐ無くなりて    夏  牙
87   母を呼ぶようにも聞こえ鴉の子    夏  牙
88     少しずらせば空いているバス      心 両句に
89   ひとり行き独りで帰る墓参り     秋  ね
90     踏み越えるなと咲く鶏頭花    秋  牙
91   昼の月わが移り気を見透かして   秋月恋 私
92     誘ふ水ならどぶろくがよし    秋恋 ね
ナウ
93   軽やかに舞ふ紅顔の美少年         心
94     迦陵頻伽は等伯の筆          禾
95   松林の上に祥雲たなびきて         栞
96     背筋ただして望む初富士     新年 私
97   無粋なる我も知りたる人に会い       牙
98     弊衣破帽で寮歌高吟          心
99   花びらをナイスキャッチと青い春   春花 禾
挙句     囀り繁き旅立ちの朝       春  ね

      芭蕉   一
      風牙 二十三 
      ね子  十八
      草栞  十三
      禾   十一
      氷心  十四
      私  二十二

                             定座なし
                           __________
 初折表 12345678       (1~8)   花一つ、月一~二つ
 初折裏 12345678901234 (9~22) __________
 二折表 12345678901234 (23~36) 花一つ、月一~二つ
 二折裏 12345678901234 (37~50)__________
 三折表 12345678901234 (51~64) 花一つ、月一~二つ
 三折裏 12345678901234 (65~78)__________
 名残表 12345678901234 (79~92) 花一つ、月一つ
 名残裏 12345678       (93~100)_________

式目  
正風芭蕉流準拠十カ条
投稿用 

写真提供はフォト蔵さん

2011年11月4日金曜日

没句


 島の灯や明石の浦に鳴く千鳥╲俤人を慕ふ姫君

  源氏物語 明石の姫君の俤付のつもり
  
  写真提供はフォト蔵さん