2012年12月5日水曜日

芭蕉の仕損じ



          (『誹諧深川集』元禄六年)


#jrenga 所収:原田曲齋『貞享式海印録』

許六曰く。巻出来終りて師曰く。「此誰の字は全く前句の事也。これ仕損じ也」といへり。(『こ東問答』) 

    薄りと門の瓦に雪降て     許六 (うっすりと)
      高観音に辛崎を見る    洒堂
    今はやる単羽織を着連立ち   嵐蘭
      奉行の鑓に誰れも隠るゝ  芭蕉  

四句目の芭蕉の付句、別に問題ないんじゃないと思う人は連句は今一。アウト! 誰れは前句の人々のことで前句に縋っている。

「蕉門の付句は前句の情を引き来るを嫌ふ。ただ前句はこれいかなる場、いかなる人と、其事其位をよく見定め、前句を突き放して付くべし」と言っている張本人の失策である。

仕損じならば直し給えと弟子らは言わず、芭蕉本人も自ら直そうとしなかったらしい。悪い例も残せば後人の為になると考えたのだろうか。

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